先週、かなりキツイ下げに見舞われたのはユーロ/ドル。22日には、一時1.0332ドル処まで下落する場面があり、重要な節目の一つである昨年10月安値の1.0448ドルをも下抜けたことがストップを巻き込む動きにつながった。
その背景には、一つにロシアとウクライナを巡る地政学リスクの高まりに対する懸念がある。周知のとおり、先週はウクライナ軍が英国製や米国製の長距離ミサイルでロシアを攻撃した。ロシアは報復として新型の中距離弾道ミサイルを試射し、北大西洋条約機構(NATO)側を威嚇。ウクライナ情勢の悪化がユーロ圏にもたらす影響が危惧された。
加えて、22日に発表された11月の独・仏・ユーロ圏のPMI(購買担当者景気指数)が総じて弱い内容となったこともユーロ/ドルの下げに拍車をかけた。ユーロ圏のPMI(コンポジット)速報値は48.1と好不況の分かれ目である50を割り込んだうえ、サービス業PMIが縮小に転落、製造業PMIも一段と縮小している。
いきおい市場では一旦後退していた12月の欧州中央銀行(ECB)理事会での大幅利下げ観測が復活。結果、ユーロ/ドルが一時的にも約2年ぶりの安値水準にまで値を沈めたことで、一部からは「来年にはパリティ(1.00ドル)が視野に入ってくる可能性も排除できなくなる」との声まで聞こえてきている。
トランプ氏が正式に次期米大統領に就任してからは、あらためて関税強化の影響に対する警戒が強まることも避けられない。ただ、その点は既にかなりの部分が織り込まれている可能性があるうえ、何よりトランプ氏が問答無用の保護主義策にどこまで本腰を入れて取り組むのかはいまだ不透明でもある。
また、ユーロ圏内における足元の賃金&サービスインフレがかなりしぶといことも事実であり、なおもユーロ/ドルが1.045-1.050ドル処まで一旦値を戻す可能性も封印はできないと心得ておきたい。実際、22日には1.04ドル台前半の水準まで値を戻す動きも見られており、これが単に「週末を控えたポジション調整目的のユーロ買い・ドル売り」であったのかどうか、ひとまず見定めることも重要となろう。
もちろん、ドル/円の行方が足元で一層不透明な状況になってきたことも、ユーロ/ドルが市場で狙い撃ちされている要因の一つと見ていいだろう。
まず、目下の市場では12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における追加利下げ観測がジワリと後退している。その証拠に、米国債市場では政策金利に敏感な米2年債利回りの上昇率が米10年債利回りのそれを上回る、つまり2-10年債利回り格差が一段と縮小する傾向が強まっている。
先週20日には、米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事が「さらなる利下げには慎重な姿勢で臨みたい」との認識を示し、これを市場は意外感を持って受け止めた。振り返れば、ボウマン氏には「9月のFOMCで0.5%ポイントの大幅利下げ決定に反対した」という“前科”がある。FRB理事が反対票を投じるのは約20年ぶりのことだそうで、同氏の慎重姿勢にはそれなりの理由があると認識しておきたい。
一方、先週は日銀の植田総裁の発言に市場の注目が集まったものの、その内容は多くの市場関係者に肩透かしを食らわせるものとなった。結果、市場では日銀による12月追加利上げ観測がやや後退している模様だが、日本の10年物国債利回りが先週21日に一時1.10%まで再浮上していたことも事実として見逃せない。
つまり、目下は「米国の追加利下げも日本の追加利上げも可能性としては5分5分」でドル/円は方向感に乏しい。よって、ひとまずは一目均衡表の週足「雲」上限を下抜けるかどうかに注目し、下抜けた場合は次に62週移動平均線を試す動きとなるかどうかを確認したいと個人的には考える。
(11/25 07:00)
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