先週27日に行われた自民党総裁選の結果に対する市場の反応は、かなりあからさまなものになった。既知のとおり、決選投票において石破茂氏の得票数が高市早苗氏のそれを上回ったことが判明した途端、ドル/円は大幅に下落。一時146.50円処まで持ち上げられていたところから、一気に143円割れの水準まで叩き売られた。
市場は、日銀の早急な利上げをけん制する姿勢を示していた高市氏の勝利をほぼ確信していた模様であったが、結局は日銀の独立性を尊重する石破氏が勝利し、事前に膨らんでいた円売りポジションが一気に解消される事態となった。後に取引が開始された夜間立会取引(ナイト・セッション)でも日経平均先物は大幅に下落し、結果的に一層の円買い・ドル売りを誘う。むろん、一連の大幅下落にはアルゴリズム取引も大きく関わっていると見られ、そのために必要以上の強い売りが浴びせられたとの感もないではない。
週明けの東京市場で日経平均株価が一旦大きく下落することは間違いないが、いつまでも“石破ショック”が尾を引くとも思えない。早々に収束すると見る。
加えて、27日のNY時間に発表された8月の米個人消費・支出(PCE)価格指数(デフレータ)が弱めの結果を示したことで、一段とドル売りが進んだことも見逃せない。
米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げを正当化するデータがまた一つ加わったことで「年内にもう一度“大幅利下げ”を実施するかどうか」に対する市場の見方は五分五分になりつつあるという。本日(30日)は、パウエルFRB議長が全米企業エコノミスト協会(NABE)で講演する予定となっており、ひとまずはその内容が注目される。
さらに、今週は9月のISM製造業景気指数やISM非製造業景気指数、米雇用統計などの発表が目白押しとなるわけだが、最終的に「年内の利下げはあと0.5%ポイント」との見方を大きく変えるものにはならないと個人的には見る。
なお、ドル/円は先週末にかけて142円台前半の水準まで値を下げたものの、再び一目均衡表の週足「雲」の下限が下値サポートとして意識された模様であることも再確認しておきたい。先週の週足ロウソクが長めの上ヒゲを伴う形状となったことには注意を要するが、今週の終値が週足「雲」下限の節目をクリアに下抜ける格好になるとは、まだ言い切れないものと思われ、個人的には一旦下げ渋っておかしくないと見る。
まずは、10月1日召集の臨時国会での首相指選挙を経て石破新政権が発足した時点での内閣支持率や石破氏が掲げる政権構想の詳細、その評価などを見定めたうえで、先週末からのドル/円の下げに歯止めがかかるかどうかを見定めることが重要であろう。
すでに、10月中旬以降に衆院解散・総選挙が行われる見通しとなっており、過去の事例から考えても投票前から株価は強含みで推移しやすいという点も一応は考慮したい。さらに、投開票の結果、自民党が単独過半数を確保すれば、かなり高い確率で株価は上げ潮モードになると見る向きも多い。むろん、その場合はドル/円にも一定の上値余地が生まれると見られる。
また、対ユーロでドルが強気に転じるかどうかという点もここで見定めておきたい。先週のユーロ/ドルは再び1.12ドル台に乗せる動きとなったものの、やはり1.12ドル台に到達したところからはどうにも上値が重い。
これまでは「欧州中央銀行(ECB)の今後の利下げペースの方がFRBよりも緩慢になる」との見方が市場で支配的であったが、ここにきてそうした見方にも徐々に変化が生じている。27日に発表されたフランスとスペインの9月の消費者物価指数が弱めの結果となったこともあり、10月の欧州中央銀行(ECB)理事会で追加利下げが行われるとの見方が急速に強まっている点にも注目しておきたい。
(09/30 07:00)
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