先週末23日の米国株市場において、NYダウ平均が前日終値比比462ドル高の4万1175ドルで取引を終えた。7月17日につけた終値ベースでの史上最高値に「あと数十ドル」というところまで一気に値を戻してきたことになる。言うまでもなく、その背景には米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ実施と米国経済の軟着陸(ソフトランディング)の双方に対する期待の広がりがある。
やはり、先週行われたジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長の講演内容が一つには大きかったと言えよう。既知のとおり、その講演内容は市場で「利下げについてかなり積極的」、「パウエル・ピボット」などと、やや驚きをもって受け止められた。
前日(22日)に伝わった米連邦公開市場委員会(FOMC)委員のインタビュー内容に対しては「9月の利下げ開始には前向きながら、その後の利下げペースは市場が織り込んでいるほどではない」と受け止める向きが多かった。そのため、講演が始まる前まではドルを買い戻す動きが優勢となっていたことも事実である。
しかし、パウエル氏の講演内容は想定していた以上にハト派的であった。やはり、7月の米雇用統計の結果が弱めであったことと、21日に米労働統計局が公表した年次改定値において3月までの1年間の雇用者数が81.1万人も下方修正されたことなどが、講演内容に一定の影響を及ぼしたと考えるのが普通であろう。
パウエル氏は、利下げのペースなどについては従来通りの慎重姿勢を変えていない。それでも、市場は9月のFOMCで通常の倍となる0.5%ポイントの利下げが実施される可能性を一定程度織り込み始めている模様である。
むろん、それまでには、まだいくつもの重要指標の発表が控えている。さしあたり、今週30日に発表される7月の米個人消費支出(PCE)デフレータの結果は大いに気になるところとなる。先の講演でパウエル氏は「インフレ率が2%への軌道にあるとの確信を深めた」と述べていたが、果たしてどうか。もちろん、その1週間後には目下最大の関心事である8月の米雇用統計の発表も予定される。
FOMCの結果が判明するまでは、市場で様々な思惑が交錯し、場合によってはドル売り圧力が一段と強まる場面もあり得る。とはいえ、やはり9月のFOMCでは0.25%の利下げに留まる可能性の方が高いと見ていいだろう。より大きな幅での利下げを余儀なくされた場合、市場では景気悪化懸念が再燃する可能性が高い。FOMC参加メンバーらは、そうした事態に陥ることを極力回避しようと考えるだろう。
週明けの東京市場では、先週末に見られた米株の大幅高とドル/円の急落の“綱引き”が見られるものと思われ、どちらになびくかが大いに注目される。
仮に、日本株安となればドル/円には一層の売り圧力がかかる可能性もあり、その場合は直近(8月5日)安値や一目均衡表の週足「雲」下限水準が下値サポートとして意識されるかどうかを確認することが重要となる。逆に、日本株高となればドル/円は145円あたりまでのリバウンドを試す可能性もあると見られる。
ドルの行方という意味では、いよいよ1.12ドル台に乗せてきたユーロ/ドルの動向からも目が離せない。目先は、昨年7月高値=1.1276ドルが上値の目安として意識されやすい。また、昨年10月安値と昨年12月高値、今年4月安値を元にN計算値として弾き出される1.1292ドル処というのも一つの上値の目安となり得る。
先週22日に公表された7月の欧州中央銀行(ECB)理事会の議事要旨は、9月12日の次回会合で追加利下げの実施を決定する可能性を示唆していた。今週は30日に8月のユーロ圏消費者物価指数の発表を控えており、その結果によっては、そろそろユーロの上値余地が限られてくる可能性もある。
(08/26 07:00)
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