先週発表された7月の米生産者物価指数(PPI)や米消費者物価指数(CPI)などの米物価指標がインフレ鈍化の傾向を明示するものになったこともあり、9月17‐18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切ることは、もはや市場で確実視されている。
ただし、7月下旬以降に一時的にも強まった「一気に0.5%ポイントの利下げもあり得る」との見方は大きく後退。大幅利下げの実施観測というのは米国経済がリセッションに陥りかねないとの懸念から生じていたわけであるが、ここにきてNYダウ平均が4万ドル台を回復するなど、主要な米株価指数が総じて持ち直してきていることで、徐々に景気後退局面入りへの懸念も緩んできている。なにしろ、先週末16日のS&P500種は7日続伸となり、7月16日高値から8月5日安値までの急落に対して、すでに78.6%戻しの水準にまで大きく持ち直してきている。
今後も、しばらくは株価を横睨みしながらの展開が続く可能性が高いと見る。
なかでも特に注目度が高いのは、今月28日に予定される半導体大手エヌビディアの5-7月決算であろう。同社と関連が深い台湾TSMCが今月9日に発表した7月の月次売上高は、前年同月比44.7%増の2569億台湾ドルと単月の過去最高を更新。いきおい、市場ではエヌビディアの決算に対する期待が見る見る高まっている。
同社の5-7月期の売上高に関しては、市場から「前年同期比で2倍以上に膨らむ」と期待する声も聞かれる。それだけに、むしろ「好決算でも低評価」となる懸念もないではない。月並みながら、いずれ今回のエヌビディアの決算は「当面の米・日株価の行方を想定するうえでの一つの試金石」となる可能性が高い。
もちろん、エヌビディアの決算発表の前に、注目の「ジャクソンホール会議」(22日-24日)が控えていることも見逃せない。9月の米利下げはほぼ確定として、目下の市場はFRBがどの程度のペースで追加利下げに踏み切るかに関心を強めている。
その点について、23日に講演するパウエルFRB議長が直接的に言及する可能性は低いと思われるが、米労働市場の情勢についてどのような見解が示されるかという点はやはり気になるところ。7月の米雇用統計の結果がドル/円の下げを加速させる一因となったことは記憶に新しいが、7月分(調査期間は12日を含む1週間)については、やはり巨大ハリケーン「ベリル」がテキサス州に上陸(8日)し、150万戸余りが停電に見舞われるなど、猛威を振るったことの影響を考慮する必要がある。
また、先週発表された7月の米小売売上高が事前の市場予想を上回る結果となった点についても、同月はアマゾンをはじめウォルマートやターゲットなどの米小売大手が大々的にセールを行った点を考慮しなければなるまい。ちなみに、アマゾンが7月16日から2日間に亘って開催した「プライムデー」の売上高は過去最高を更新したと伝わる。
つまり、7月の米雇用や消費のデータが8月以降の趨勢的な流れを予測するうえで必ずしも参考になるとは限らないということである。
とまれ、なおもドル/円については一目均衡表の週足「雲」上限の水準(現在、145.82円処)が下値サポートとして強く意識されている模様。米商品先物取引委員会(CFTC)が16日に発表した13日終了週の投機筋のポジションは円の売り越しから買い越しに転じており、ひとまず円キャリーの解消は一巡した模様である。
一方で、今週は21日移動平均線が150円割れの水準まで下りてきて、目先は上値が押さえられやすくもなる。足元は147.50円処を軸に146.70-148.30円処のレンジ内で推移すると個人的には考える。
(08/19 07:00)
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