ドル/円は先週、ついに今年4月高値=160.23円処や1990年4月高値(=160.36円処)を上抜け、一時的にも161円台に乗せる動きとなった。重要な節目と考えられていた水準をも上抜けたことから、ストップロス・オーダーを巻き込んだ買いが加速。一段の円安進行を受けて神田財務官は「足元の動きは過激」との認識まで示していたが、それでも具体的な実弾介入の動きは今のところ見られておらず、むしろそのこと自体がドル/円の一段の上昇に加勢したとの感さえある。
先週末には「神田財務官が7月末で退任」との一報が伝わったが、本邦当局者らによる口先介入にほとんど効果が見られなくなっている今となっては、その影響も自ずと限られるものと思われる。こうなってくると、もはや日銀がやや大胆に“次の一手”を打たないことには、足元の円安の流れに歯止めをかけることは難しい。
とはいえ、次に日銀が具体的な材料を市場に提供するのは来週9-10日に行われる「債券市場参加者会合」ということになりそうで、それまでにはまだ少し時間がある。その間、ドル/円がもう一段の上値を試すとすると、一つには「2022年10月高値から2023年1月安値までの下げ幅を1.382倍した値を同安値に加算した値=161.35円処」というのが目先的な上値の目安ということになろう。実際、先週28日につけられた高値は同水準にほぼ顔合わせした。
もっとも、来週の債券市場参加者会合を通じて国債買い入れ減額の詳細が市場に伝えられ、結果、大した混乱が生じなければ「それは7月利上げの制約にはならない」と見る向きも市場にはある。先週25日にブルームバーグが行った調査でも、回答した43人のエコノミストのうち33%が「7月の政策会合で日銀は追加利上げの実施を決定する」と見ているという。
もちろん、仮に日銀が追加利上げの実施を決定しても「基本的な円安の流れは長期化する」と見る向きもないではない。ただ、一方で米景気の減速傾向が一段と鮮明になり、想定よりも米利下げのペースが速まるとなれば、また話は別である。
28日に発表された5月の米個人消費支出(PCE)デフレータは、事前の市場予想通りの内容となったが、年後半の米利下げ期待を正当化するものであったとの声もあちこちで聞かれていた。なかには「米景気は予想よりも速いペースで減速しつつあり、それは米連邦準備制度理事会(FRB)が見込んでいたよりも急速」、「後になって必要上の利下げを迫られる可能性がある」と述べる向きもある。
実際、27日に発表された1-3月の米GDP(確報値)において、米経済の主要エンジンである個人消費は前期比年率1.5%増と、改定値から0.5ポイント下方修正されていた。週末に発表された6月のシカゴ購買部協会景気指数やミシガン大学消費者信頼感指数は予想を上回っていたが、そこには6月に見られた米株高の資産効果も反映されていると見られる。つまり、一つには「米株価が7月以降も好調に推移するかどうか」が米景気の行方にとって非常に重要ということになろう。
また、当面はフランスの総選挙の結果とその影響からも目が離せない。30日に行われた第1回投票の結果については「マリーヌ・ルペン氏が事実上率いる極右政党国民連合(RN)の優勢」を、事前に織り込む動きが市場で見られていた模様だが、週明け1日早朝の市場では「RNが事前の一部世論調査より小幅な差で勝利することになる」との見方が伝わっており、シドニー市場ではユーロ/ドルを買い直す動きも見られている。
より重要な第2回投票の結果については「RNが絶対多数を確保するのに必要な票数を満たせない可能性」も取り沙汰され始めた(執筆時)。言うまでもなく「選挙は水物」であり、今週はより慎重にユーロと向き合いたい。
(07/01 07:10)
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