先週のドル/円は、基本的に151.50-75円処の価格レンジを軸としたもみ合いの展開。3日には、発表された3月のADP雇用統計が強めの結果を示したことによって一時151.95円処まで上値を伸ばす場面もあったが、それは「きっかけ(口実)さえあればドルを買い仕掛けたい」とする向きが少なくないことの証左でもある。
ただ、この場面では後に発表された3月のISM非製造業景気指数が弱めの結果となったことで、再び元のレンジ内水準に落ち着く動きとなった。やはり、米インフレの鈍化傾向を追認させるようなデータに対して、なおも市場は敏感である。
次にドル/円が大きく動いたのは、日本時間で5日未明のこと。既知のとおり、朝日新聞電子版が日銀の植田和男総裁のインタビュー記事を掲載したことがきっかけとなり、ドル/円は一旦151円台前半の水準まで一気に値を下げる場面があった。
記事が伝えたところでは、植田総裁が追加利上げの条件などについて「夏から秋にかけて物価目標の確度が高まれば利上げを検討していく」などと述べ、物価に影響するならば為替も判断材料とする意向を示したという。この日は、中東情勢の緊迫化から米株価が弱含みで推移していたという事情も重なって、コンピュータによるプログラム売買(アルゴリズム取引)がやや強めにリスク回避の円買いで反応した模様である。
結局、4日のNYダウ平均が大幅安となったことで、それを受けた日経平均株価も寄り付き段階から大きく値を下げ、ドル/円も一時的に151円割れの水準まで下落することとなったが、週を終えてみれば再び元のレンジ内水準まで値を戻す動きとなった。
つまるところ、ドル/円が強含みとなる場面では依然として「152円の壁」が意識されて上値が重くなる一方、一時的にも下値を試す展開になると、そこには数多の買いの手が控えていて下値も自ずと限られるといった状況が続いている。
その背景には、一つに中東情勢の緊迫化に伴ってリスク回避のドル高・円高の状態になっているということもあるが、やはり何より大きいのは市場の米利下げ期待が一段と後退してきていることにある。最もインパクト大であったのは、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が「インフレが進展しないようなら、年内は利下げが必要ない可能性」に言及した(4日)こと。さらに、翌5日にはダラス連銀のローガン総裁が「利下げについて考えるのはあまりに早すぎる」などと述べたほか、米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事に至っては「可能性は低いものの、インフレを抑制するために追加利上げが必要になる可能性はある」とまで述べていた。
5日に発表された3月の米雇用統計も、前記のFRB関係者らの見解を後押しするような結果となり、少し前から市場で話題となっている「年内の米利下げは1回だけ」とのアトランタ連銀のボスティック総裁の主張を、もはや無視することもできない状況になってきている。ちなみに、今週も前出のカシュカリ氏やボスティック氏らによる発言の機会が用意されており、市場は彼らが発するコメントに耳をそばだてて聴き入ることとなろう。さらに、今週は3月の米消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の発表も控えており、市場にはいつも以上に神経質な対応が求められることとなる。
一方で、政府・日銀当局者らが為替介入の判断基準について「ファンダメンタルズから逸脱し、投機的で行き過ぎた動きが見られたとき」を基本(建前)としていながら、かねて断固として否定している「水準(レート)」をも大いに気にしていると思われるフシがあるという点も少々気になるところではある。
かくも複雑な材料が入り混じるなかで、個人がドル/円に関わることには相応の慎重さが求められるものと心得たい。個人的には、今週11日に欧州中央銀行(ECB)理事会を控えるなかで、現在200日移動平均線が位置するところまで値を戻してきたユーロ/ドルの戻り売りの方を検討したいと考える。
(04/08 07:00)
FX・CFD・証券取引・外国為替のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-