前回更新分の本欄で「7日に中川日銀審議委員が金融経済懇談会に出席」という件に触れ、ドル/円については「150円処をクリアに下抜けたらショートを振る」と述べた。下値の目安は149円あたりと考えていたが、それは甘い見立てであった。
既知のとおり、まずは6日に発表された2月のADP全米雇用報告の結果が予想を下回った。加えて、米下院金融サービス委員会で行われたパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による議会証言の内容が想定していたほどタカ派寄りではなかったこともあり、その日のドル/円は149円台前半の水準まで下落する動きとなった。
翌7日は、東京市場で日経平均株価が寄り付き後に一時380円強の上昇(前日終値比)を見ていたところからほどなく急落に転じ、連れてドル/円は149円処を一気に下回る展開。そこへ、中川氏による「賃金と物価の好循環が展望できる」などといった発言が伝わり、途端にドル/円は148円割れの水準までスルスルと値を下げたのである。
結局、週末8日には一時146.48円まで下押す場面を垣間見たわけであるが、その要因には2月の米雇用統計の結果が弱めだったことだけではなく、日本時間の夕刻に一部通信社が「日銀はマイナス金利政策を3月に終了する方向に傾いている」などと報じたことが大きかった模様である。
勢い、目下の市場では日銀がマイナス金利を解除する時期について「3月」と見る向きが増えているようだが、正味のところ、今となっては3月、4月のどちらでも既に市場は「織り込み済み」であろう。
それでも8日夕刻に伝わった観測報道に市場が少々過剰な反応を見せたのは、パウエル議長が議会証言で利下げについて「今年のある時点で始めることが適切になるだろう」と述べ、市場の利下げ期待をけん制しなかったことや、7日に行われた欧州中央銀行(ECB)理事会で今年のインフレ率見通しを下方修正したこと、加えて8日の東京市場で日経平均株価が後場から急速に値を下げたことなどなど、数々の材料が複合的に押し寄せるなかで一部の短期投機筋が仕掛け的に売りを出したことに因ると思われる。
それにしても気になるのは、8日のNY時間にエヌビディアが前日終値比で5.55%もの大幅な下げを演じたうえ、シカゴ先物市場でCME日経平均先物価格が3万9千円割れの水準まで大きく売り込まれたことである。先週のドル/円が最大で4円余り円高方向に振れたことを考えれば無理もないのだが、もともと目先のスピード警戒感がかなり強まっていたことを考えると、当面は少々まとまった調整を交える可能性もないではない。
それは米国株にも言えることであり、足元で一層強まってきた年内の米利下げへの期待が一定の下支えにはなると思われるものの、先週はナスダック総合指数とフィラデルフィア半導体株(SOX)指数がともに史上最高値を更新する動きを見せていただけに、このあたりで一旦は調整含みの展開が見られてもおかしくはない。
前回も述べたように、日本株高は海外投資家によるヘッジ目的の円先物売りを伴うケースが少なくない。逆に、ひとたび調整含みの展開となれば、たちまち買い戻しの動きが急になる可能性があることも事実。確かに、先週のドル/円の下げは投機的な売り仕掛けによるところも大きかったと見られるが、日・米株価に短期的な買われ過ぎの修正が生じれば、相応に円売り・ドル買いの手が引っ込みやすくもなるであろう。
ちなみに、足元でユーロドルは一目均衡表の日足「雲」を上抜けてきており、対ユーロでのドルはやや弱含みとなっている。一方、ドル/円については200日移動平均線(現在は146.16円処)が下値サポートとして機能するかどうかが一つの焦点。また、一目均衡表(週足)の基準線が位置するところ(現在146.08円処)も一応確認しておきたい。
(03/11 07:00)
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