先週29日、滋賀県で行われた金融経済懇談会において高田日銀審議委員の発したコメントが一時的にも強い円買いを誘った。
高田氏は2%の物価安定目標について「実現が漸く見通せる状況になってきた」と述べたうえで「今日の極めて強い金融緩和からのギアシフト、例えば、イールドカーブ・コントロールの枠組みの解除、マイナス金利の解除など、出口への対応も含め機動的かつ柔軟な対応に向けた検討も必要」との考えを披露。サプライズというほどの内容ではなかったが、なかで『ギアシフト』などといったインパクトが強めのワードが盛り込まれていたことによって、一瞬、市場がビックリしたところもあったとは思われる。
もちろん、同日は月末であったことから、円売りポジションを一旦解消しておきたいと考えていた向きにとって格好のきっかけとなった部分もあろう。そもそも、2月8日に内田日銀副総裁が金融政策変更後の姿について語り、それが円売りサプライズを巻き起こした時点で、もはやマイナス金利解除の方向性については、市場で「織り込み済み」のシールが貼られることになったものと考えられる。
そこで今、大きな関心事の一つとなっているのは日銀によるマイナス金利解除のタイミング。3月1日付の日本経済新聞紙面上にもあったとおり、ここにきて「3月解除」を予測する声がジワジワと増えてきていることも事実である。なにしろ、3月の日銀会合が行われるのは春季労使交渉の集中回答日(15日・一次集計)の後となるため、その内容次第では3月解除に踏み切る可能性も否定できなくなってきている。
むろん、中小企業の賃上げデータも確認したいということであれば、3月の決断はやや時期尚早ということになるし、もともと「そんなに急ぐ必要ないだろう」と見る向きも少なくはない。どのみち、既に「織り込み済み」ということであるならば、それ自体が直接的に為替相場を揺るがすこともないようには思われる。
ただ、足元で日経平均株価が「ついに4万円の大台に乗せるか?」といった状況(目先の高値警戒感もかなり強まっている状況)にあるなかで、日銀のマイナス金利解除が当面の株価の動向に影響を及ぼす可能性は大いにあると思われる。そうでなくとも、仮に4万円の大台乗せとなれば、そこで目先の目標達成感から一旦反落に転じることもあり得るだろうし、あろうことか4万円到達目前で押し戻されるようなことになれば、そこから失望売りの反応が生じる可能性もある。
周知のとおり、日本株高は海外投資家によるヘッジ目的の円先物売りを伴うケースが少なくない。実際、先週29日に発表された1月の米個人消費支出(PCE)価格指数の結果を受けて一旦150円割れの水準に沈んだドル/円が、翌1日の東京時間には日本株の大幅高を受けて再び150円台半ばの水準まで持ち直す動きとなった。
この日の日本株高は、前日のNY市場でアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が前日比で9%超の上昇となるなど、米国のIT・ハイテク株が強い動きを見せたことが一因。つまり、前回も述べたように、足元では米・日株価の日々の値動きがドル/円、クロス円の価格変動にも大きく影響するようになっている。よって、まずは週明けからの日本株の値動きを注視しながら、慎重にFX投資戦略を練りたい。
まして、今週は月初めということもあって、重要な経済指標の発表やイベントのスケジュールが挙げたらキリがないほど数多く控えている。日銀の関係では、5日に金融庁・日経共催のイベントに植田総裁が出席し、7日には中川審議委員が金融経済懇談会に出席する。個人的には、ドル/円について150円処をクリアに下抜けたら149円処を目安にショートを振る算段で臨みたいと考える。
(03/04 07:00)
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