前回更新分の本欄で「注目はエヌビディア決算発表後の株価」と述べた。発表前の市場では「好結果は織り込み済みで一旦は材料出尽くしになる」との見方も少なくはなく、筆者を含め株価の調整と円買い戻しの動きを警戒する向きもあったわけだが、実際に出てきたのは市場予想を上回る驚愕の実績数値で、さらに2-4月期の売上高見通しも予想を上回るものであることが判明した。
結果、まずは時間外のNY市場でエヌビディア株が強含みとなり、流れは22日の東京市場にも波及。その強烈なインパクトは、ついに同日の日経平均株価を史上最高値水準まで力強く押し上げた。なお、この日は欧州株価指数のストックス600やNYダウ平均も史上最高値を更新しており、国際金融市場全体にリスク選好ムードが広がったことで、ドル/円、クロス円はともに上値を追う動きとなった。
言うなれば、円全面安の展開ということになるが、今のところはドルやユーロを積極的に売る理由も乏しい。米国では、引き続き米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利下げ期待が大きく後退し続けており、先週末にかけてはFRBのジェファーソン副議長やウォーラー理事、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁らが口々に早過ぎる利下げのリスクに言及していた。米エコノミストの間では、米国経済がリセッションに陥るとの予測が時を経るごとに後退しているという。米雇用市場が堅調であることに加え、家計需要の力強さと政府支出が米経済を支えるとの見方がその背景にあるようだ。
一方、ユーロ圏に関しては欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が23日に「1-3月の賃金交渉のデータを確認したい」との意向をあらためて示している。20日公表された10-12月の賃金交渉データは前年同期比4.5%上昇と、7-9月の4.7%上昇から減速していたが、それだけで早期の利下げ判断に結び付けることは難しい。既知のとおり、1-3月のデータが公表されるのは5月下旬であるため、ECBの利下げ開始時期は早くても6月以降の定例理事会での判断によることとなる公算が大きい。
つまるところ、米国とユーロ圏における利下げ開始時期の予測は、まだ現段階では見定めがつかない。実際、ユーロ/ドルには2月半ばから緩やかなリバウンドが生じているものの、今のところは200日移動平均線(200日線)と89日移動平均線(89日線)の上値抵抗が意識されていると見られ、方向感を見出しにくい状態にある。
足元の米国経済を支える米消費が想定以上に底堅い理由としては、新型コロナウイルス禍の給付金などで生じた米家計の「過剰貯蓄」が指摘される。かつて、それは早々に枯渇して、消費を下押しするとの見方が多かった。ところが、ここにきて複数の米地区連銀や民間金融機関などが相次ぎ枯渇時期の見通しを後ろにずらしているというのである。そこには当然、米株高の資産効果が反映されていよう。
換言すると、米消費の行方とFRBの政策判断は「株価次第」ということになるわけであり、それは米早期利下げ期待が後退するなかでの“エヌビディア・フィーバー”が、いつまで続くかにもよるだろう。むろん、それはドル/円、クロス円の先行きにとっても極めて重要な要素ということになる。
目先を言えば、ここにきて米10年債利回りには上げ一服感が漂ってきており、ゆえにドル/円の上値にも一定の重さが感じられる状況となっている。ヘタにショートを振ることも憚られるが、強気で上値を取りに行くのも容易ではない。あえて短期でドル/円と向き合うのであれば、個人的には150.40円を軸とした140.90-150.90円のレンジ内での動きを想定しておきたい。また、ユーロ/ドルについては、まず200日線と89日線に明確に押し戻されるかどうかを確認し、仮に1.08ドル処をクリアに下抜けてきたら、一旦短期ショートする算段で臨みたい。
(02/26 08:00)
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