先週13日のNY時間にドル/円は一時150.88円処まで上値を伸ばした。その1週間前、8日の安値から見れば、3円近くも円安方向に振れたわけである。周知のとおり、その主な要因としては8日の東京時間に伝わった内田日銀副総裁の発言と13日に発表された1月の米消費者物価指数(CPI)の結果が挙げられる。
日銀の内田副総裁は「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」と表明。筆者を含めて「想定通り」との印象を抱いた向きは少なくないと思うのだが、どうやら海外勢の間では日銀の利上げ期待が思いのほか強かったらしく、市場は「想定外」で円売りと判断した。
また、市場には1月の米CPIの結果も「想定外」と映ったようである。あらためて振り返ると、総合指数は前年比で+3.1%と前回の+3.4%を下回り、コア指数も前回から横ばいという結果。筆者の第一印象は「弱め」であったが、インフレ鈍化傾向にブレーキがかかっているようにも見えなくはない。少なくとも、市場の早期利下げ期待を正当化する内容ではなく、行き過ぎていた「期待」の修正が引き続き行われていることで、それがドルの買い戻しにつながっていると見るのが適切ということか。
兎にも角にも、13日にドル/円が重要な心理的節目である150円処を超えてきたこと自体がインパクトとしては大きかった。結果、ショート勢は慌てて買い戻しに、目先筋は新規の買い乗せに走った。結果、かなりのストップロス・オーダーも巻き込まれたと見られ、一時的にも実勢以上にドル買いのフローが強まったものと思われる。
過去1年ほどのドル/円の推移を振り返ると、昨年3月安値と7月安値を結ぶ以前のサポートライン(上昇チャネルの下辺)が、昨年12月の初旬以降は逆にレジスタンスラインとして意識されやすくなっている模様。それでも、足元は同ラインが150円を超える水準に浮上してきており、その意味では13日に見られた150円台後半までの上昇も許容されるところではある。ただ、こうなってくると当然、市場では財務省の介入警戒感も台頭する。実際、鈴木財務相や神田財務官らが既にけん制のコメントを発しており、その効果は「知れたもの」なのかもしれないが、やはりドル/円の一段の上値を追うことには慎重でありたいと考える向きもあろう。
もちろん、年内の米利下げ予想が消えてなくなるはずはなく、最もタカ派寄りと見られるアトランタ連銀のボスティック総裁でさえ「9月と12月の年2回の利下げ予想」を示している。いずれにせよ「年内には利下げサイクルが始まる米国」と「そろそろ利上げに踏み切る日本」という構図に変わりはない。そして、米金利の先行きに対する市場予想の修正(ドルの買い戻し)作業も終わりが近い。実際、先週末16日に発表された1月の米生産者物価指数(PPI)は強めの結果であったものの、結局のところドル/円は上に往って来い、ユーロ/ドルは下に往って来いという展開になった。
日銀による政策判断のカギを握る「春季労使交渉の集中回答日」までは、あと1カ月もない。おそらく、かなり“前向きな”数値を目の当たりにすることとなりそうだが、果たして市場は既にそこまで織り込んでいるのだろうか。もはや、マイナス金利解除については相当程度織り込んでいるとしても、解除後に一定程度の利上げが実施される可能性も大いにあるというところまでは、まだまだ織り込んでいないはずである。
なお、今週は21日に注目の米エヌビディアが決算を発表する。相変わらずの好結果が見込まれるものの、例によって「出たらしまい(材料出尽くし)」となる可能性もあり、相前後して東京市場でもハイテク株を中心に利益確定の動きが見られる可能性はある。目先的にも日本株が一旦調整の場面を迎えるならば、ドル/円にも一定の売り圧力がかかると見ておく必要があろう。
(02/19 08:00)
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