今日までの1週間、154.36円まで進んだ円高は、筆者にとっては予想の範囲内(先週コラム参照)、執筆時点でこの1週間(7/17-24)の変動幅は4.26円(約2.7%)であった。そこで次のステップを考えた。結論から言えば、一時的に154円割れの円高局面はあるかもしれないが、「31日の日米中央銀行決定会合を迎え、日米据え置きであれば円安再燃」、一方「日銀かFRBのどちらかで、市場で予想されている9月変更が7月に早まるようなことになれば、円高ドル安の流れが強まり、8月には150円割れ」となるシナリオである。
これは、今回の介入決定基準相場を162円とすれば、現水準154円台は8円の介入効果となるとの考えがベースである。8円とは、4月末の介入以降の変動幅が160円から152円までの8円であり、相場の値動き的には、今回も同様の介入成果があったと計算すれば154円台は当面のドル安底値に近いと判断できるからである。これは数字だけの一致であり、そのほかの条件(投機筋のポジション額、景気実績、インフレ率等)は必ずしも一致しているものではないが、筆者の経験からは、偶然とかたづけられるものではないと思っている。
さて、現在の円高をもたらした大きな(いや唯一と言ってもよい)要因は、やはり日本政府の介入である。もし介入がなく、経済原則だけで取引されていたら、間違いなく、ドル円は165円、そして170円に向かっていただろう。短期日米金利差は5%超(オーバーナイト金利、米5.38%、日0.1%)で、10年債利回り比較でも縮まったとはいえ、現在でも3%超(米4.25%、日1.0%)ある。高い所にお金が流れる原則から考えれば、ドル高は自然の流れである。
それに、新NISAによる投資資金が海外資産購入に継続的に増加し、インバウンドにより日本で使われる資金流入よりも大きくなり、今の円安要因にクローズアップしてきたことも意識しておかなければならない。ある意味キャピタルフライト(資金の海外流出)が起きている。円安悪玉論も聞こえてくるが、大事なことは円安が日本国信認低下をもたらしているか、どうかである。円安=即悪い、との考え方だけで判断することには注意を要する。
今週も米国の重要な経済指標は続く。今日24日に米国PMI(景況感)、明日25日は米国第2四半期GDP速報値、翌26日は、FRBが最も重視していると言われる(パウエル議長は議会証言でも言明)個人消費支出価格指数(PCE)が発表になる。現在の市場予想はGDPが+2.1%(前期第1四半期は+1.4%)の上昇。一方PCEは年率ベースで、総合が+2.4%(前月+2.6%)、コアが+2.5%(前月+2.6%)の低下である。発表日が違うので、両方合わせれば、にはならないが、予想通りであれば、ドルの一方的な下落にはならないだろう。
そして来週31日には、今月のハイライトである日米中央銀行の金融政策決定内容が明らかになる。現状の予想は、米国(FOMC)は据え置きとなっているが、日銀に対しては、3ヵ月毎の展望レポートに加え、QT(債券購入金額の減額)スケジュールが発表されることになっており、政策金利の引き上げと合わせて、緩和政策の完全な決別が表明される舞台が揃ってきたので、格別の注意が必要である。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は引き続き介入警戒は残り、153.00-156.00円の小幅円高を予想する。一方欧州通貨は、ECB理事会で予想通り政策金利の据え置きが決まり、ユーロドルは堅調、先週とほぼ同じ1.0800-1.1000と予想する。ただ対円では円高の流れを受けて167.00-170.00円とユーロ安円高と予想する。そして英ポンドドルは1.2850-1.3050と引き続き1.30を越えると予想する。
(2024/7/24、 小池正一郎)