「これは面白い」。先週末の日銀金融政策決定会合が終わったところで、改めてドル円の相場展開を眺めてみた時に出た言葉である。ドル円のチャートが筆者の目に特異な形が見えた。近いうちにドル円は2~3円のドル安・円高が来る、とのシグナルと読んだ。5月初めからのドル円の軌跡は、「エスカレーターで上がり、エレベーターで下り、そしてまたエスカレーターで上がる」流れが繰り返されている。この道は何処まで続くのか、またその変動要因は何か、考えてみた。
その軌跡のスタートは5月3日の151.86円で始まった、その前4月29日に突如160.20円に跳ね上がったことをきっかけにドル売り介入が入った。これがきっかけで、ドル円は逆3段ロケットのように降下、4日目に151.86円まで下落。しかしそこから上昇が始まったことで、5月3日のローソク足は、チャート的には下髭が長いいわゆる「トンボ」と呼ばれる形となった。ここを起点にドルは上昇、大まかに言えば規則正しくドルはもと来た道を上ってきた。
ただ一直線でなく、頭書に描いたエスカレーターとエレベーターを交互に乗り換えてジグザグ道で上ってきた、先週6月14日には、介入の入った4月29日以来のドル高値158.25円まで到達した。現在(6月19日17:30)は157.75円近辺で取引されているが、158円が抵抗線となっているように見える。
ところで、このジグザクの一日の取引幅(歩幅)を見ると、ドル高には、1円以下の変動幅で(エスカレーターのように)上昇が数日続き、4円ほど上昇したところで一気に1~2日で2~3円(エレベーターのように)ドルは下落する動きである。これがセットになって5月3日から2回発生、現在は3回目のエスカレーターに乗っている最中である。
日柄で見ると、1回目は、エスカレーター(ドル高の陽線)は約7日で4.05円、2回目は同じく7日で4.10円、3回目の今は既に8日経過し、上昇幅は3.15円、としぶとく乗り続けている。これは介入警戒となる158円の抵抗線突破に時間がかっていることが要因だろう。下落となるエレベーター(ドル安の陰線)は、1回目が1日で2.4円、2回目は2日で2.90円であったので、ドル安のきっかけが起これば、2~3円のドル安は驚くことはないだろう。
そのきっかけは二つ想定される、一つは米国景気後退を示すデータが続くこと、もう一つはドル円がこのまま上昇し、介入が入ることだ。最初のケースがより現実味が高いと見ているが、それは昨日の米小売売上高の低調さでその懸念が広がっているからだ。これから、米国では住宅関連のデータとして明日20日の住宅着工から始まり、GDP(27日、第1四半期の最終値)、個人消費支出価格指数(28日)と続く。要注意だ。
また、先週のFRBと日銀会合で今月の中央銀行月間は一息ついたが、7月後半には再び中央銀行の決定会合がある。今月は昨日の豪中銀が同様に据え置きを決めたことで、利下げの流れも止まったかに見えるが、まだ明日の英国、スイス、来週のスエーデンが残っている。中央銀行関係者の発言も同時にフォローしていかなければならない。
加えて、一難去って、また一難ではないが、来週から選挙関係を含めてイベントが続く。27日は米大統領選挙候補者(バイデン・トランプ)のテレビ討論がある。その後、フランス国民議会(下院)第一回投票(6/30)、 英国議会総選挙(7/4)、米雇用統計(7/5)、フランス第2回投票(7/7)、パウエル議長議会証言(上院7/9、下院7/10想定)、そして7/11の米CPIとつながっていく。特にフランスの選挙は、今のところマクロン大統領は辞任しないと発言しているが、結果次第では政局に発展する可能性がある。古い話だが、1981年にミッテラン氏が大統領に当選した時は、為替相場が大変動を起こした記憶が今でも鮮明に残っている。歴史は繰り返すとの言葉を大事にしたい。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は156.00-159.00円と広めを維持したい。またユーロドルは、ECBは7月利下げなしとの見方で1.0650-1.0850とユーロ高を予想、対円でも168.00-170.50と先週より小幅ユーロ高と予想する。そして英ポンドドルはBOEは政策金利を据え置くと予想し1.2650-1.2850と3週同じレンジで予想する。
(2024/6/19、 小池正一郎)