介入を効果的に成功させるためのポイントは、一に「びっくり」(ここはないだろうという日時)、二に「継続」(1回だけでなく何回も)、そして三に「協調」(日本だけではないよと思わせる)と言われる。数が増えるにしたがって効果は高くなるが、今回はまずはびっくりで、始まった。東京市場が休みの日、まさに薄商いのなか、5円余りも円高をもたらしたことだ。少ない弾で効果を大きくすることができ、今回は成功したと言えよう。
きっかけはもちろん朝方10時半過ぎに突然160円に急騰したことが引き金になったのだろう。158円半ばから一気に160円を突破したのだから、政府日銀が言う「投機的な動き」そのものであった。実際に介入に入るのは1時間半後であったが、この間に米国側に最終確認を取ったのであろう。しかし決まったら、腹を据えて、市場との闘いを始めた。
筆者は欧州市場が開くまで虫の目で相場を追いかけていたが、当日は「継続」の姿勢が見て取れた。少なくとも、4~5回は断続的にドル売りを行ったのではないだろうか。ドル売りが治まると、「待ってました」とばかり、ドル買いが入った。そこですかさず第二弾の売り、そのパターンが数度見られた。14時過ぎに155円台に下がったところで、一旦終了した。しかしその後じりじりとドルは上昇、157円台が定着しそうなタイミングで、16時過ぎにドル売りを再開。「ここまで来るか!」と市場を思わせるドル売りで、30分で154.50円までドルは低下した。
NY市場で再度のドル売りがあり、155円前半までドルは下落させられたが、その後は介入と思われるドル売りは見当たらない。ここで注目されるのが第二のポイント「継続」である。一日の間で継続的に介入したことは想像に難くないが、日を跨がって介入することは行われていない。今、推定されることは介入相場は160円の可能性が高いということだが、一方で決して160円が最終目的かどうかはわからない点だ。今回の介入の目的は、今後の介入姿勢で決まると考えている。
介入の種類として、一定基準を守る「防衛介入」、相場を変動させる「押し上げ(押し下げ)介入」、急激な変動を回避させるための「スムージング介入」などがある。今回は、当初は160円を付けさせない防衛介入の意味合いがあるが、筆者は決してそれが唯一の答えではないと考えている。
まず第一の関門は、本日発表されるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果と、その後のパウエル議長の記者会見内容である。市場のコンセンサスは、「金融政策は据え置き」である。事実、米国CME(シカゴ商品取引所)のフェッドウォッチでは、今回の据え置き確率は98.9%(NY5/1 5:30現在)、更に現在のターゲットレート(5.25-5.50%)は今年11月FOMCまで継続されるとの予想となっている。方向的には、むしろ、利上げ傾向も織り込み始めており、パウエル議長の発言で、タカ派的なニュアンスが少しでも現れると、ドル相場に大きな影響を与えかねない。これが2回目の160円挑戦。
そして今週末3日には、米雇用統計が発表になる。見出し項目の市場予想は、NFP(非農業部門雇用者数)は24.5万人(前月は30.3万人)、失業率は前月と変わらず3.8%となっている。よほどの減少でもない限り、ドル売りとはならず、逆に少しでも上振れると、これもドル買い要因となる。いずれにしてもこのゴールデンウィークも「24/7」(一日24時間、一週7日間)は避けられない。
そこで、今後1週間の相場見通しであるが、今週も材料が多く、荒れ模様の「動」が続く。ドル円は157.00-161.00円と広めの予想とする。ユーロドルは、先週と同じ1.0600-1.0800、と予想、対円では先週ドル円が160円を超えた時、1992年9月以来の171.56円までユーロ高円安を記録したが、その流れは維持され167.50-170.50とユーロ高継続と予想する。そして英ポンドドルは先週と同じ1.2300-1.2600と予想する。ちなみに、ポンド円は、2008年8月以来の1ポンド=200円を超え、200.50円までポンド高円安を記録した。
(2024/5/1、 小池正一郎)